りんごの無農薬栽培がむずかしいワケ ーーー農薬メーカー元社員が語る
2019/06/22
目次
まとめ
◆りんごの農薬散布は10日に1回で14回程度。
◆りんごは、他の作物に比べ病害虫が多い。
◆木になるため散布量が多い。
◆栽培期間が長い。
◆野外なので温度管理などできないため
何回も散布する必要がある。
◆いろんな作物と比較しても一番厳しい条件での栽培だと
わかります。
これが、りんごの無農薬栽培がむずかしい理由です。
以下に、細かく見ていきます。
◆りんごの農薬散布は10日に1回で14回程度
長野県病害虫防除基準(以下、長野県基準)では、
発芽前の3月から収穫後の12月まで
14回散布することになっている。
/ | 表1、りんごの農薬散布暦(長野県基準) | ||||
回数 | 時期 | 対象1 | 対象2 | 対象3 | 水量(L/10a) |
1 | 発芽10日前 | 菌 | / | / | 300 |
2 | 発芽10日後 | 菌 | 虫 | / | 350 |
3 | 開花直前 | 菌 | 虫 | / | 400 |
4 | 落花期 | 菌 | / | / | 450 |
5 | 5月中下旬 | 菌 | / | / | 450 |
6 | 6月上旬 | 菌 | 虫 | / | 500 |
7 | 6月中旬 | 菌 | 虫 | / | 600 |
8 | 6月下旬 | 菌 | 虫 | ダニ | 600 |
9 | 7月上旬 | 菌 | 虫 | / | 600 |
10 | 7月中下旬 | 菌 | 虫 | ダニ | 600 |
11 | 8月上中旬 | 菌 | 虫 | / | 600 |
12 | 8月下旬~9月上旬 | 菌 | / | / | 600 |
13 | 9月中下旬 | 菌 | 虫 | / | 550 |
14 | 12月上中旬 | 菌 | / | / | 300 |
/ | 合計回数 | 14 | 9 | 2 | 6,900 |
/ | 合計のべ回数 | / | / | 25 | / |
具体的な病気の名前
腐らん病
赤星病
黒星病
うどんこ病
斑点落葉病
輪紋病
炭疽病
褐斑病
すす点病
すす斑病
以上10病害が防除対象病害ですが、
青森県ではこれにモニリア病が加わります。
これらの病気はすべて糸状菌いわばカビで、胞子が飛んできて
病気になります。
種類によって時期も違うので時期ごとに違う薬が必要となります。
具体的な害虫名
シンクイムシ類
モモシンクイガ
ナシヒメシンクイ
ハマキムシ類
キンモンホソガ
ギンモンハモグリガ
アブラムシ類
リンゴワタムシ
カイガラムシ類
クワコナカイガラムシ
ケムシ類
ヒメシロモンドクガ
カメムシ類
以上、13種類ですが、シンクイムシ類のなかには、
モモシンクイガとナシヒメシンクイも含みますが、
スモモヒメシンクイという別の虫もいますので、
ここでは13種類としておきます。
細かく言えば、
ハマキムシ類だとリンゴコカクモンハマキ、
リンゴモンハマキ、ミダレカクモンハマキなどがおり、
青森県では別々に対応しています。
こちらも、種類と時期がそれぞれ異なり、効く薬も万能のものは、
ありません。
さらに、上記昆虫類とは、
別にハダニ類としてリンゴハダニとナミハダニとが発生し、
いわゆる殺虫剤は、ほぼ効かず、別に殺ダニ剤が必要となります。
ハダニ類は、分類上はクモの仲間に近く4対(8本)の脚をもっています。
昆虫は3対(6本)です。
参考資料
こちらは輸出用りんごの病害虫対策に関する資料ですが、
りんごの病害虫が写真入りでまとまって解説されております。
こちらは、さらに細かく載っています。
最初の3回は花が咲く前、最後は収穫後なので、
りんごが、なっている間は、10回です。
花が散る5月半ばから9月のつがる収穫まで
およそ10日に1回散布する計算です。
ふじは11月収穫なのでもう1~2回散布が
増えることが多いです。
そのほか、摘果剤として花の後、
収穫前は落果防止剤を使うこともあります。
また、冬場の剪定時には、
枝の切り口に塗布剤を塗ることもあります。
除草剤を1-2回散布する。
10回のうち、ほとんどが病気用の殺菌剤(表中:菌)と
害虫用の殺虫剤(表中:虫)を混ぜて散布します。
別々に散布するとそれだけで手間が倍になりますから。
病気のほとんどは、カビの仲間なので胞子がいつでも飛んでます。
害虫はりんご畑の外から、山林などからやってきます。
これを基準に地域では農協ごとに時期や薬剤名が少しずつ異なります。
農家は、農協のいうとおりやってたら農薬代も労力も大変なので、
少なめにするという人もいます。
県や農協は、りんごがうまく採れなかったときのクレームがこないように、
完璧を目指して多めに指導する傾向があるように思います。
※これは私の感想です。
りんごのほかに、よく農薬使う作物としていちごがあり、
10日に1回散布とすると、9月の苗から5月まで9か月の間に
27回散布する計算になり、ビックリするかもしれません。
ただ、いちごは、りんごと異なり、花がさいて果実収穫まで
1か月程度なので、同じ果実にかかる農薬は3回程度です。
りんごは、いちごと異なり同じ果実に10回程度の農薬が
散布されます。
ただ、果実もどんどん大きくなるにつれて、
かかった農薬も薄まるうえ、雨で流れたり日光で分解したりします。
葉っぱも、どんどん新しい葉っぱが出て、
新しい葉っぱには農薬がぜんぜんついていないので、
つぎの散布が必要になります。
浸透性の農薬もありますが、全部じゃないので、
農家は気が抜けません。
田んぼの農薬のように、春先に苗箱に1回粒剤を散布して、
夏までOKなら、苦労はいりません。
田んぼの除草剤も春先1-2回で、ほぼ終了です。
◆りんごには、病害虫が多い
長野県病害虫防除基準から、
作物ごとに病害虫の種類数、散布水量、収穫時期などを
まとめてみました。
りんごでは、黒星病をはじめとして、11種類の病気が出て、
15種類の害虫が発生します。
表2.作物ごとの病害虫種数と 農薬散布水量・回数 | ||||
作物名 | 病気 | 害虫 | 水量 L/10a | 回数 |
りんご | 11 | 15 | 300~600 | 14 |
梨 | 6 | 18 | 300~450 | 14 |
ぶどう | 9 | 10 | 200~350 | 10 |
もも | 7 | 11 | 300~500 | 12 |
いちご | 8 | 7 | 150 | 27 |
水稲 | 8 | 10 | 150 | |
麦 | 8 | 1 | 150 | |
大豆 | 4 | 5 | 200 | |
とうもろこし | 5 | 3 | 200 |
散布回数について
長野県基準には、果樹の防除暦は載っていますが、
いちごをはじめとする野菜や稲、麦など畑作物は防除暦が載っていません。
いちごは、
10日に1回散布とすると、9月の苗から5月まで9か月の間に
27回散布する計算 で算出しました。
散布水量について
りんごや梨はSSでの散布量です。水稲は粒剤の使用も多いのですが、ここではあえて、水で薄めて散布する場合の散布量を載せています。
表3. りんごと他作物との違い | |
作物名 | りんごとの比較コメント |
りんご | 病害虫、水量、回数とも多い。 メインのふじは11月収穫。 |
梨 | 病気種類、水量少ない、8月から収穫 |
ぶどう | 病気種類、水量少ない、9月から収穫 |
もも | 病気種類、水量少ない、8月から収穫 |
いちご | 回数は10日に1回としても、水量少ない。 |
水稲 | 病害虫種類、水量少ない。 |
麦 | 病害虫種類、水量少ない。 |
大豆 | 病害虫種類、水量少ない。 |
とうもろこし | 病害虫種類、水量少ない。 |
虫食いでも無農薬のりんごなら食べたい、なんて話もありますが、
りんご栽培の大敵はむしろ病気なのです。
病気対策に殺菌剤を何回も散布する必要があるのです。
病気にやられてひとつもならない、ということになるのです。
奇跡のリンゴの木村秋則さんも無農薬りんご栽培に挑戦して
7年間収穫ゼロだったと著書に書いてます。
8年目は、2個だけなった、そうです。
りんごに出る病気はだいたい糸状菌、平たく言えばカビなので、
胞子がいつでも飛んでいて、
家庭菜園のアオムシを割りばしでつまむ、みたいなことは
広いりんご畑では到底、不可能なことです。
りんご:11病害15害虫(ハダニ含む)
梨:6病害18害虫
ぶどう:9病害10害虫
もも:7病害11害虫
いちご:8病害、7害虫
水稲:8病害、10害虫
麦:8病害1害虫、
大豆:4病害5害虫、
とうもろこし:5病害3害虫
◆りんごの農薬散布は病気対策が基本
表4、青森県 黒星病対策調査 平成30年
番号 | 発生度 | 園地名 | 7月 発病葉率 | 7月 発病果率 | 10月 発病葉率 | 10月 発病果率 | 散布回数 | 総水量 | 平均水量 L/10a |
1 | 少発 | 浪岡吉内 | 4.7% | 0.0% | / | 0.3% | 17 | 7,690 | 452 |
2 | 少発 | 浪岡北中野 | 2.1% | 0.0% | / | 0.0% | 16 | 9,800 | 613 |
3 | 少発 | 平川市碇ケ関 | 2.8% | 0.0% | / | 0.0% | 13 | 5,640 | 434 |
4 | 少発 | 弘前市独狐 | 3.4% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 14 | 5,710 | 408 |
5 | 少発 | 弘前市大沢 | 1.5% | 2.4% | 0.4% | 4.0% | 14 | 6,600 | 471 |
6 | 少発 | 弘前市三和 | 1.4% | 0.7% | 2.8% | 0.0% | 13 | 5,300 | 408 |
7 | 少発 | 弘前市悪戸 | 4.6% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 16 | 6,340 | 396 |
8 | 少発 | 平川市沖舘 | 1.3% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 14 | 6,600 | 471 |
9 | 少発 | 板柳町掛落林 | 2.0% | 0.0% | / | 0.0% | 13 | 5,800 | 446 |
10 | 少発 | 三戸町梅内 | 1.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 14 | 6,310 | 451 |
11 | 多発 | 弘前市乳井 | 42.8% | 12.7% | / | 6.7% | 16 | 6,200 | 388 |
12 | 多発 | 弘前市折笠 | 46.5% | 24.7% | / | 11.3% | 13 | 5,200 | 400 |
13 | 多発 | 弘前市五代 | 26.8% | 7.3% | 16.7% | 3.3% | 11 | 4,150 | 377 |
この表は、青森県での黒星病対策の事例から(農薬散布回数と水量)について、
一覧表にしたものです。
これだけの散布回数を黒星病のためにこなしているのです。
もとのデータでは、具体的な農薬名を書いてあります。
この表からつぎのことがいえます。
多発園地では、総水量、平均水量が少ない。
回数が16回と多くても、平均水量が388Lと
少ないため多発となっている。
7番と11番とでは、散布回数16回、
総水量で140リットル違うだけであるが、
前2年の発生状況が異なるため、違う結果となった。
多発園地では、7月の段階で発病葉率が桁違いに多い。
10月における発病果率は、そのまま収量、収入に影響する。
元の資料はこちら
青森県りんご黒星病優良防除事例集 平成31年3月 次の表は、青森県での事例ですが、殺菌剤を15日間隔と10日間隔で
散布して病気の出方を調べています。
注目は、一番下の行の無散布区です。
すす点病を除くと発病葉率41%~99%となっています。
このくらい、無農薬だと発生します。
◆葉っぱの病気だけなら関係ない?
7月時点で、半分近くの葉っぱが病気であれば、
そこからの栄養が行き届かず良い果実はできません。
病気の葉っぱは、摘み取って、あとから出てくる葉っぱからの栄養だけで
果実をまかなうわけですから、おいしい果実は期待できません。
7月時点に比べ、発病葉率や発病果率が下がるのは、
病気の葉っぱや果実を摘み取っているためですが、
それだけ、少ない葉っぱで果実をまかなうことは味の低下、
7月から果実数が減れば、いちごと違って果実の増加は見込めませんので、
そのまま収量に影響します。
10月になって調べても病気の果実が
あるわけで、収量、収益に直結します。
葉つみ作業行い日光をあてる、
一方、葉とらずりんごは、収穫直前まで
葉っぱからの栄養がいきわたるのでよりおいしいりんごができると
いわれます。
けっして、見た目だけ重視の消費者のためだけの、
農薬散布ではないのです。
もろに収量に影響するのです。
果実1個につき葉っぱ何枚が必要というデータもあります。
◆日本の農薬使用量はアメリカの5倍?!
アメリカの主要作物である麦、大豆、とうもろこしでは、
りんごに比べると病害虫が少ないので
農薬も少なめで、草丈も小さいので散布水量も少なくて済みます。
日本で一番面積の多い作物は統計資料を見るまでもなく水稲です。耕地面積の30%くらい。
しかし、アメリカの水稲面積は1%にも満たないのです。りんごはもっと少ない。
このあたりのことは、農薬会社の営業マンだった私としては、
感覚的にわかります。
ただ、アメリカは広いので農薬会社の営業マンとしては、
たくさん売れる市場であることは間違いありません。
日本なら北海道です。単位面積あたりは少ないが総使用量は多い。
北海道農業はアメリカのように小麦、てんさい、じゃがいもなど畑作がメインです。
この作物構成の違いから日本はアメリカの5倍(成分換算㎏/ha)の農薬を使っているとか いわれています。
日本が単位面積あたり12キロだとして、アメリカは2.4キロですが、
耕地面積はアメリカは日本の90倍ありますから、
12×1=12
2.4×90=216となり、アメリカの方が18倍使うことになる。
そうはいっても、りんごの面積は日本全体からみれば1%程度なので
やはり日本はアメリカよりも温暖湿潤で病害虫雑草が出やすいといっていいでしょう。
仮に、日本の作物がアメリカと同じ麦、大豆、とうもろこしで90%以上占める構成になっても
日本の方が病害虫多いため農薬必要量は多くなるかもしれません。
ただ、アメリカでも無農薬にするとりんごは収穫ゼロとなるデータがありますので、 りんごではやはり農薬がかかせないようです。
◆りんごは、木になるので散布水量が多い
長野県病害虫防除基準から、作物ごとの散布水量を表1.にしてみました。
葉っぱの少ない春先は300L/10aでも、
葉っぱの繁る6月頃には600L/10aの水量=農薬量が必要なのです。
たくさん撒くには時間もかかるので
農家は早いスピードでスピードスプレイヤーを
運転したがりますが、散布水量が少ないと
病気が出ることが上の表4から明らかです。
ほかの果樹に比べても、
木が大きいので散布水量=必要農薬量も 多めです。
ましてや、水稲や野菜ならせいぜい腰くらいの高さなので
散布水量はりんごの半分以下の150リットル/10a程度で済みます。
◆りんごは、栽培期間が長い
秋遅くまでなっているふじ 2017.11.16 ↓↓↓
りんごの収穫はだいたい早生のつがるで9月ですが、
晩生のふじでは、11月です。
ほかの果樹で、11月までならしているものはありません。
梨は8月~10月、ぶどうは9月~10月、
ももは8月には収穫終了しています。
稲刈りだって、だいたい10月には終わってますよね。
いちごは、9月から5月までの9か月で、
10日に1回の散布としたら 27回となるが、
りんごに比べ丈が短いので散布水量150Lと少ない。
野菜も、いちごと同様栽培期間の長いトマトなどのように
散布回数多い例もありますが、
開花から収穫まで1か月程度なので、
同じ果実にはりんごほど何回も
農薬がかかることがありません。
キャベツやレタスは、
同じ植物体に農薬がかかりますが、
長野県の場合、雪のない夏場の栽培が
中心となりますので、
苗を畑に植えてからは2か月程度で収穫となり、
りんごよりは栽培期間が短く、
地面に近く丈も短いので散布量も少なめです。
関東などでのキャベツやレタスは、
冬をまたぐ栽培パターンでは、
害虫の発生がうんと少ないので農薬散布も少なくてすみます。
◆りんごは、野外(露地栽培)なので温度湿度管理、防護管理ができない
りんごは野外の木になっています。
ほかの果樹に比べると管理面積が広いので、
梨でやっている防護ネット(雹や害虫防護)や
ぶどうやさくらんぼの雨よけハウス、
きのこ栽培のような温湿度管理ができません。
仮にやろうとすれば莫大なコストがかかることが
簡単に想像できます。
そんなワケで病気(カビの胞子)も害虫も
物理的に防護することができません。
◆みかんやお茶はどーなの?
長野県病害虫防除基準で調べているので
みかんやお茶の話が出てきません。
でも、みかんは、りんごに比べると木が小さいから散布水量が少ない、
お茶の木もりんごに比べれば丈が短いので散布水量が
少ないことが容易に想像できます。
主要な県を調べてみたのですが、
長野県みたいに、防除基準や防除暦をネット上で
公開している県がみつかりませんでした。
みかん:静岡県、和歌山県、愛媛県
お茶:静岡県、鹿児島県
◆実際の防除暦の例
防除暦は、いわば作業予定表なので、
天候や病害虫の発生状況により
予定通りいかないこともあります。
実績としては、農家の防除日誌とか作業日誌をみないと
本当の回数までは、わかりません。
あくまで目安として、見てください。
山梨県JAふえふきりんご防除暦 13回 のべ24薬剤 他の果樹も多数あり
ほかの作物(おもにかんきつ類)の例
ざっと見て、りんごに比べ病害の
種類数が少ないことが印象的です。
さらに、黒点病は果実表面だけなので、
見た目だけがまんできれば、
収穫までもっていけます。
和歌山県JAありだ柑橘類 11回 のべ18薬剤 5病害、12害虫
三重県=三重南紀温州みかん 16回 のべ30薬剤 8病害8害虫
◆防除基準の説明
植物防疫法に基づき・・・・
農作物の安定生産と農薬の適正使用に資するために作成しています。
ほかの県では防除指針という名称を使うことがあります。
長野県の農業関係者が主体となって作り、
以下のように作物ごとに病害虫の名前と
有効な農薬名や使い方が載っています。
普通作物では、水稲はじめ、麦類、とうもろこし、大豆など10種類
果樹類では、りんごを筆頭に、キウイフルーツまで17種類
野菜類では、49種類
いも類4種類、花き類25種類
果樹類では、防除暦というカレンダー形式の表に
時期別に病害虫、農薬名、散布水量など載せています。
長野県内で栽培の少ないみかんやお茶などの項目はありません。
静岡県などの防除基準を参考にする必要があります。
長野県では、冊子としての資料648ページ(平成30年版、700円)ばかりではなく、
WEBページも提供していますので、
買わなくても、必要なページだけ見たり印刷したりできます。
毎年、新情報が入るため最新のものを使用したほうが
いいでしょう。
1回の散布で4病害4害虫に対応する。↓↓↓
特に、2019年度は、いままでの農薬が効かないりんご黒星病菌(耐性菌)が
2018年に発生したため、春先の開花前後の農薬が大きく変わりました。
2019年版では開花直前の散布は下記のように変更になりました。
殺 菌 剤
アンビルフロアブル 100 mℓ |
インダーフロアブル 10 mℓ |
オンリーワンフロアブル 50 mℓ |
サルバトーレME 33 mℓ |
スコア顆粒水和剤 33 g |
トリフミン水和剤 33 g |
マネージDF 16 g |
ラリー水和剤 33 g |
ルビゲン水和剤 33 g のいずれか |
昨年まで載っていた上記薬剤が削除となり、以下の農薬一種類になりました。
ユニックス顆粒水和剤 50 g
こういうことがあると、
メーカーとしては品切れになってしまう可能性が高いです。
去年までは11種類から選択だったのに、
今年は1種類だけですから注文殺到してるかもしれません。
私のいた会社の薬です。
雑草対策は、また別にまとめてあります。
◆こんなに農薬散布したりんごの残留農薬は?
別の記事にまとめていますが、ほとんど検出されていません。
また、検出されても基準値内なので安全とされています。
基準値そのものの決め方については、また別の記事で書く予定です。
筆者プロフィール
昆虫少年から大学は農学部の昆虫学教室に入り、
卒論はみかんのアブラムシ。
大学卒業後農薬会社の研究所をスタートに
本社、仙台、福岡、関東、長野などで
技術普及と営業で合計31年超勤めた。
畑での実験が大好き。
娘が小さいころ、
パパのお仕事は植物のお医者さん、
と言っていた。
関連資格:農業改良普及員、農業高校教員、
毒劇物取扱責任者、農学士
関連記事
関連する過去記事も貼っておきます。
りんごの農薬について一問一答 31年以上勤務の農薬メーカー元社員が語る
りんごの皮には栄養あるけど残留農薬心配、洗えばとれる?表面のベトベトは?
農薬嫌いのブログ記事に反論してみる 農薬会社30年の経験から