生き物写真館

栃木県小山市で朝の散歩中や長野県・海外などで出会った生き物を中心とした写真館です。 野鳥、昆虫、花、などの写真を撮影情報とともにお伝えします。 撮影テクニックやカメラについても書いてます。

よもやま話

日本の農薬残留基準は世界一基準が緩いのか

2020/08/05

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はじめに

FB友達から私のコメント欄に
以下のコメントをいただきましたので、
 
農薬会社に30年以上勤めた私から
この件につき、解説します

「農薬は、海外向けの方が少ない、日本は世界一基準が緩いからたっぷりらしい」

1、日本は世界一基準が緩い、わけではない。

以下のリンクを見れば、明らかで、作物ごと、農薬ごとに
日本がゆるいものもあれば厳しいものもある。

各国の農薬の最大残留基準値の比較

台湾 と日本との比較 単位ppm

表から一部抜粋

マメ類       台湾   日本
イソキサチオン   0.5   0.05
イプロジオン    5.0   1.0
オキサミル     2.0   1.0
クロルフェナピル  0.5   0.1
ジコホール     5.0   0.1

バナナ        台湾  日本
アゾキシストロビン  1.0  2.0
ジフェノコナゾール  0.5  0.5
フェンブコナゾール  0.3  0.05

いちご
いちご

2、以前台湾向けのいちごに農薬が残留して輸出できなかった例がありました。

そして、このことについて、facebookのあるグループで
以下の投稿している人がいます。


Kさん 20200214投稿  シェア184件
 
2年ほど前に日本のイチゴが、
台湾の規制値を超えた殺虫剤のピメトロジンが検出され、
輸入が禁止されていた。
規制値は日本の200分の一であるがこれを
上回ったとのことである。台湾では2009年にも、
青森のリンゴから殺菌剤のトリフロキシトロンが
検出され輸入停止になっている。
 
日本の農薬の使用量は、何と中国の20倍!?


この方の
引用もとは以下の、北海道の獣医師が書いてるブログです。

「台湾は規制値の200倍緩い日本のイチゴを輸入禁止にしていた」

「台湾は規制値の200倍緩い日本のイチゴを輸入禁止にしていた」

そこには、以下のように書かれており、
獣医師のコメントとはとても思えない内容です。

「農薬が規制値以下であれば安全であるとするのは、
消費者を守っているように見えても、
本来はなかった物質を生産性のために
使用していることを認識するなら、
安全基準などないに等しい。
農薬や保存薬とはそうしたものである。」

いちご
いちご

以下、私の解説です。

まず、殺菌剤のトリフロキシトロンは、間違いで
トリフロキシストロビンが正解でしょう。

日本でのいちごにおけるピメトロジンの残留基準値が2ppm、
台湾では未設定で一律0.01ppmと定めている。

ピメトロジンは、私の勤務していた会社の農薬の成分で、
商品名は、チェス顆粒水和剤です。

アブラムシ類、コナジラミ類しか効かない、
限定的な使い方をされる農薬なので、
社内では極めて安全な方の薬という
位置づけです。
いちご、なす、きゅうり、なし、ももなどの作物に使えます。
 

いちごでは、5000倍に薄めて、収穫前日まで、3回以内なら使えます。
残留基準値は2ppmです。
ppmは、別に解説します。

ところが、台湾での基準値は、0.01ppmで、
日本の200倍も「厳しい」となります。
台湾では、この農薬は登録がなく、もともと使用しないことが
前提で、そういう農薬は、一律0.01ppmと決めているだけです。

なぜ、台湾では使用できないか?
それは、メーカー側が、
台湾での使用許認可登録を取っていない「だけ」、です。
台湾のいちご栽培事情には詳しくありませんが、
おそらく日本よりは栽培面積が少なく、農薬会社として
売上が見込めないと判断されているのでしょう。

一つの農薬の、一作物一病害虫ごとに、
許認可とるにはおカネが数百万円かかります。

いちごのアブラムシと、
なすのアブラムシがたとえ同じ種類のアブラムシであっても、
いちごでの効果や残留試験、
なすで効果や残留試験、などが必要です。

だから、台湾のいちごでは、
平たく言えば商売にならん、わけです。
決して、台湾がすべての農薬について、
日本より厳しいわけではありません。

こういう事情を無視、知らずして、
台湾の200倍ゆるい日本の基準、
日本のいちごが残留農薬で輸入(輸出)禁止、というニュースだけみて、
いろんなこと思うのは自由ですが、
事実関係を調べるなりしてほしいモノです。

例えば、日本にない作物アーモンドや、
少ない作物マンゴー、クルミ、ホップ、なども
面積少ないため、多くの日本の農薬会社は登録のための費用を
かけようとはしないでしょう。

こういった作物では、
台湾のいちごのピメトロジンのようなケースと
逆のパターンも出ていると考えられます。
一つ一つ調べていないので、
細かいことはわかりません。

いちごハウス
いちごハウス


 

◆日本の農薬の使用量は、何と中国の20倍!?

この情報の元は、無農薬りんごで有名な木村秋則さんの著書から引用してますが、
そのもとはわかりません。
そもそも、中国の使用量がアメリカやイギリス並というのも、
ちょっと信じがたい数値です。

単位面積あたりの農薬使用量を国別に比較したデータは、
作物のことを無視しています。
アメリカでは、大豆、小麦、とうもろこし、など
農薬を使わなくてもそこそこ採れる作物面積が
広大です。
家庭菜園やってみれば、すぐわかるでしょう。

農薬使用が多いといわれるりんごやいちごなどは、
上記作物に比べれば少ない面積です。
米国といいながら稲作面積も割合で言えば少ない方でしょう。
その上、日本は、湿潤温暖な気候で病害虫が多めです。

農薬工業会のHPでは、
ぶどうでは、日本よりアメリカ、イタリア、フランスのほうが
農薬使用量が多くなっていま
す。

国ごとの農薬使用量を比べるとすれば
作物ごとに相当異なるので、
作物を同じにしないと
比較になりません。

そして、先の獣医師のブログをすべて信じて、
善意だと思って無批判に
シェアや流布するというのは
ミスリードです。
誤情報の拡散、デマといってもいいでしょう。

いちご
いちご

◆ppmという単位の話

ppmとは、百万分率のことで、
パーセントは百分率なので、その一万分の1が1ppmです。
百と分との間に万が入っているだけです。

一般の人にはなじみのうすい単位でしょう。
パーセントと同じ、あくまで割合の単位です。
必ず分母と分子とが必要です。

1ppmのイメージとして以下の例が農水省のページに載ってます。
一部、私が追加。

*1トン積みの小型トラックの中の1g

*1メートル立方の家庭用風呂の中の1ml

*100万円のうち1円

*タテ20m、ヨコ50m、深さ1mのプールの中の、1リットルの牛乳

いちご1トンのうち、2グラムが2ppmです。
2グラムで即死の粉末毒が、1トンのいちごにまぶされている、ということです。
ましてや、ピメトロジンは普通物なので、たとえ2グラム食べても
即死できません。

まあ、不正確なたとえでいえば、
年に1回しかしないキャンプで作ったカレーの中に入った虫1匹や
葉っぱで大騒ぎしているようなもんです。

まとめ

日本の農薬残留基準値は、世界一緩い、わけではない。

日本の農薬使用量が世界一多いというのも、
作物内容を無視した暴論である。

国ごとに農薬使用量を論ずるのであれば、
作物を同じにすべきである。

以上のことは、気づいているほかの方もブログ等で発信していますので、
私だけの意見ではありません。
ただ、農薬会社の事情についてまで言及している情報は
見たことないので、それも加えてまとめてみました。

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