生き物写真館

長野県山ノ内町、志賀高原、栃木県小山市、海外などで 出会った生き物を中心とした写真館です。 野鳥、昆虫、花、などの写真を撮影情報とともにお伝えします。 撮影テクニックやカメラについても書いてます。

よもやま話 信州の自然

農薬を一切つかってないりんごについて、---農薬メーカー元社員が調べる

2019/06/24

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NO.2 農薬を一切つかってないりんご 大湯ファーム(青森県)

りんごの葉についたユキヤナギアブラムシ
りんごの葉についたユキヤナギアブラムシ

先日は、りんごでは無農薬栽培がむずかしい理由を調べました。

今回は、私のパソコンで「無農薬りんご」で検索して

出てきたサイトについて調べてみます。

この検証は、昨年もやっていますが、

1年以上たっているので、変化があるかもと、

思い、やってみました。

出てきたのは、このふたつのサイトです。

NO.1 農薬化学肥料不使用のりんご (秋田県)INYOUMarket
http://inyoumarket.com/organic-ringo/
こちらについては、別の記事にしています。

農薬化学肥料不使用のりんご について調べる

NO.2 農薬を一切つかってないりんご 大湯ファーム(青森県)
https://www.ooyufarm.com/fs/apple/c/munouyaku
今回はこちらについて述べます。

以下引用は、農薬を一切つかってないりんご 大湯ファームのHPです。

「使用したのは木酢液とEMだけ!農薬は一切使用していません」


「木酢液とは
炭焼きの過程でできる煙を冷却してできる液体を精製したものです。
りんごの病気を予防し、害虫を寄せつけない効果があります。」


「木酢液とは
炭焼きの過程でできる煙を冷却してできる液体を精製したものです。
りんごの病気を予防し、害虫を寄せつけない効果があります。」


「木酢液・EMストチューを5月~9月まで10回散布しました。」

大湯ファームHPより

りんごの新梢についてユキヤナギアブラムシ
りんごの新梢についてユキヤナギアブラムシ

木酢液について

病害虫に効果なし、成分量が製品(会社)によってばらつきがある。

主成分以外にメタノール、ホルムアルデヒド、ベンツピレンなど有害物質が検出されている。
長期的摂取に伴う健康影響に関する試験成績がない。
変異原性あり(=危険なため農薬として登録できない)。

出典は以下の2009年の情報なので、その後、
これより安全側にすすんでいるのでしょうか?

木酢液、竹酢液 2009年11月
https://sites.google.com/site/naokimotoyama/old/2009/20091106

楽天などで説明をみると各社から出ていて
現在でも、 主成分(酢酸)名も量(%)も表示義務なし、ですね。

2005年には、特定農薬(酢や重曹など)候補になりましたが、
上記理由などから
不採用になっています。
こんなものを、
5月から9月まで10回もりんごに散布して大丈夫なんでしょうか?

木酢液は、昔、農薬だった

1979年2月28日に、農薬としての登録を失効しています。
つまり、現在は、登録失効農薬です。
登録失効の理由は、発がん性など安全性(危険性)にかかわるもの
ばかりではなく、
売れないなど単なる商売上の理由で、
会社が登録更新しなければそれでオシマイなので、
ただちに危険性を証明するものではありません。

登録時の内容としては、林業用苗期の土壌消毒なので、
この内容で登録が現在あっても、
りんごへの散布は、適用外使用(登録ない作物、登録ない使用法)となり、
好ましいものではありません。

つまり、登録のない農薬成分を登録のない作物・使用法で使っている。
大丈夫ですか?

アブラムシに吸われて萎縮したりんごの葉 2019.6.14
アブラムシに吸われて萎縮したりんごの葉 2019.6.14

EMストチュー について

EMストチューとEMストチュウ(EM5)とが同じものなのか
どうかもよくわかりませんが、
どちらも焼酎が入ってそうですね。


株式会社EM研究所のHP では、EMストチュウという表記です。

国際がん研究機関 (IARC) によると、
アルコール飲料は発がん性認められる A1グループです。

焼酎はアルコール飲料ですから、発がん性があるとされています。

この場合の発がん性は、飲んだ場合でしょうから、
量が全然違うと思うのですが・・・。

まあ、アルコールは気化しやすいので問題ないだろうとは、
思いますけど・・・・りんご上でどうなっているのか
誰も分析してないと思うんです。


除草剤ラウンドアップの成分グリホサートも発がん性が指摘されており、
一部の人たちは騒いでいますよ。

株式会社EM研究所のHPによると、

EMとは
Effective(有用)Microorganisms(微生物群)の略語です。
"共存共栄する有用な微生物の集まり"という意味です。
EMは自然界から採種し、抽出、培養した微生物です。

株式会社EM研究所

そもそもなんなのか不明である。
主成分や量(%)表示の義務もない資材である。

EMストチュウ(EM5):
ストチュウ(酢と焼酎)に
EM・1と糖蜜を加えて発酵させたもの。
EM・1の中に含まれる酢酸やアルコールなどの
代謝物含量を高めたものになります。


EM・1:好気性と嫌気性の微生物を複合培養したものです。
有機JAS資材リスト登録番号:JASOM-131212

株式会社EM研究所HP

EMストチュウというのは、通称であり、
EM1に酢と焼酎とを混ぜて作る民間資材のようです。

こちらにつくり方が書いてあります。

4-1-2. EMストチュウ(EM5)の作り方 <応用編>
http://emlabo.co.jp/em/guide/04/

株式会社EM研究所HP

EM1、糖蜜、お酢、焼酎、水を混ぜて自分で作る。
お酢や焼酎の銘柄も特に指定はないようです。

EM生活HPによると、以下の説明がある。

天然ストチュウ よくある質問

EMストチュウは

作物体表面の微生物叢(そう)を改善したり、
作物のクチクラ層を丈夫にすることにより

病原菌に対する免疫性をたかめたり、
害虫への忌避効果を目的とした予防的に施用するものです。


EM生活HP

これって、農薬取締法違反かすれすれの表現じゃないでしょうか?
https://www.em-seikatsu.co.jp/products/detail/?id=150#faq
EMストチュウと天然ストチュウとは、
別物なので即アウトとは申しませんが・・・

EM菌雑感

EM菌について、ざっと調べると、

疑似科学、ニセ科学、宗教、信者など、
中心的研究者比嘉照夫氏の人格や関係者の行動なども
あんまりよくない評判が多いようです。

wikipediaだけでもご覧ください。

有用微生物群

こちらのサイトも面白いですよ。

疑似科学と評定されるものの科学性評定サイト

まあ、信じる信じないは自由ですが、
こういう成分内容や量(%)も不明、表示義務もない資材を

農薬でないからといって、

無批判にりんごに10回も散布して大丈夫なのか、

非常に疑問です。

虫付きのりんごもおいしいかも?? ↓↓↓

りんごの果実についたユキヤナギアブラムシ
りんごの果実についたユキヤナギアブラムシ 2019.6.14

EM菌の安全性に関する疑問

株式会社EM研究所のHPなどを調べても
安全性に関する記述がありません。

天然物自然物だから安心安全というノー天気思考だけです。

O-157も、サルモネラ菌も、黄色ブドウ球菌も天然物自然物ですよね。

安全安心をうたうのであれば、
農薬登録に必要なさまざまな安全性試験を
すべてクリアしてからの話です。

一例として急性毒性、変異原性、催奇形性、繁殖毒性、発がん性、魚毒性、
動物、作物、土壌での残留性など

ほんだ農場というEM菌信者のHPに
北里環境科学センターのマウス試験の話(データなし)
があるだけです。
https://www.hondanojo.com/em.htm

EM菌はいくつかの善玉菌を、その効果が現れるように組み合わせたもので人体に全く安全なものです。
その安全性は北里環境科学センターのマウス試験で報告されております。
EM菌は自然界に生息する有用微生物を集めて培養したもので、人工的に作り出したものでなく、
EM菌に含まれる微生物のほとんどは、酒や、味噌、チーズなどの発酵食品に使われているものと同じです。

ほんだ農場HP

そのほか、一般の方からも以下のような疑問が述べられています。
●EM菌の安全性についての情報が不足している。

小中学校におけるEMの利用を止めてほしい

ここまでのまとめ

●木酢液は、製品・会社により成分に随分バラツキがある。変異原性あり。
●木酢液は、昔、農薬であった。
現在は、登録ないから農薬でないとはいえ、
同じ成分のものを、登録時の登録のない作物・使用法で使っている。

●EMストチューは、内容成分のEM菌の安全情報が不足している。
焼酎はアルコール飲料で発がん性ありです。

●こういう資材を農薬でないからといって、
りんごに10回も散布して大丈夫ですか?

さらなる疑問

黒星病=カビだらけのりんご食べて、大丈夫?

りんご黒星病
りんご黒星病(シナノスイート)

そして、ここのサイトで売っているリンゴは黒星病だらけです。

皮むけば大丈夫と書いてありますが、

軽症ならまだしも、かなり重症の黒星病菌つきりんごを

りんご黒星病菌は、糸状菌いわばカビです。

名前は、Venturia inaequalis といいます。

もちに生えたカビは、その部分削っても、

カビの菌糸は一番遠い角にも達していて

カビ毒を食べる可能性あるので注意ということもあります。

リンゴの黒星病菌だと、

どれだけ食べても大丈夫という研究は見たことありませんが、

無農薬だからといって、

いわばカビだらけのりんごを喜んで妊婦や子供が

皮ごと食べてて、ほんと大丈夫なの?と思うのであります。

残留農薬のリスクは低いけどカビ毒のリスクが大きくないか?
と思います。

いちごやトマトなどでは、
灰色かび病という本当にカビらしい病気が出ます。

一パックの中に灰色かび病のカビのついた果実が
ひとつでもあればすぐにクレームもの、
場合によっては食品衛生法違反でお縄ものです。

以下は参考情報です。

(参考情報)餅に生えたかび

いろいろなかび毒 りんごではパツリンというカビ毒が危険

病害虫のついた作物は安全ですか?

筆者プロフィール

昆虫少年から大学は農学部の昆虫学研究室に入り、
卒論はみかんのアブラムシ。

大学卒業後農薬会社の研究所をスタートに
本社、仙台、福岡、関東、長野などで
技術普及と営業で合計31年超勤めた。
畑での実験が大好き。

娘が小さいころ、
パパのお仕事は植物のお医者さん、
と言っていた。

関連資格:農業改良普及員、農業高校教員、
毒劇物取扱責任者、農学士

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