輸入かんきつ類に使われる「防カビ剤」は危険な農薬か?--農薬メーカー元社員が検証する
2019/07/30
週刊金曜日 2018.12.21(1214号)に以下のような記事があります。
【 輸入かんきつ類に使われる「防カビ剤」は危険な農薬 】
以下に抜粋します。
この記事の著者は、「輸入かんきつ類は食べないほうがよさそうです。」
と結論付けています。
私は、この程度なら食べても問題なしと考えています。
目次
●TBZ(チアベンダゾール)
マウスに対して、体重1㎏あたり、0.7~2.4gを
毎日傾向投与する実験の結果、
お腹の子供に外表奇形と骨格異常が認められた。
妊娠ラットに対して、体重1㎏あたり1g 1回だけ食べさせたところ、
お腹の子供に手足と尾の奇形が認められた。
オーストラリア産オレンジ果実全体7サンプルから
0.9ppm~3ppm検出
果肉検査 6サンプルから
0.04~0.75ppm検出
アメリカ産レモン5つ中、4つから数値不明で検出
********************************************************************
ここからは、計算です。
ぜひ、電卓を取り出して計算してみてください。
私の計算違いであれば、教えてください。
マウスに対して、体重1㎏あたり、0.7~2.4g を
体重50㎏のヒトに換算すると、
3.5g~120gをふりかけのように毎日食べた計算となる。
妊娠ラットの実験では、1回だけとはいえ、
体重1㎏あたり1gを食べさせている。
これも、体重50㎏のヒトに換算すると
50gをふりかけて食べたことになる。
一番濃い検出率の3ppmで計算してみる。
かんきつ1個250gとして、そのなかに含まれるTBZは、0.00075gです。
250g×3÷100万=0.00075g
ppmは、100万分率なので、全体×ppm÷100万で、含まれる量が計算できる。
3%なら、100分率なので、250g×3÷100=7.5g と同様です。
昔やった、食塩水の中の食塩量の計算です。
では、3ppmのオレンジを何個食べると3.5gになるか、
3.5g ÷ 0.00075g=4,667個です。
では、1回だけ、50gだと
50g ÷ 0.00075g=66,667個です。1回で食べれる量でしょうか?
TBZのかんきつで類での残留基準は10ppmなので、
一番高い3ppmでも基準値以下です。
ADI(ヒトが毎日一生涯食べてもいい量)は、0.1㎎/体重1㎏/1日です。
体重50㎏のヒトなら、0.1㎎×50=5㎎=0.005gです。
0.005g ÷ 0.00075g=約6.7個 を皮ごと毎日一生涯食べ続ける計算となります。
果肉だけからは、一番多くて、0.75ppmなので、果実全体の3ppmの4分の1です。
果肉だけなら、6.7個×4=26.8個を毎日食べ続ける計算になります。
イメージです。これは粉ゼラチン44g ↓↓↓
●イマザリル
イマザリルを 0.012% 、 0.024% 、 0.048% 含むえさで
マウスを育てた実験で、そのマウスから生まれた子供に、
授乳初期の体重増加抑制と神経行動毒性が認められた。
全サンプルから
1.4~2.3ppm検出
果肉 0.03~0.15ppm検出
アメリカ産レモン5つすべてから
数値不明で検出
********************************************************************
ここからは、計算です。
実験で一番低い値が、0.012%=120ppmです。
一番高い検出値 2.3ppm
120÷2.3=52倍
1日1個のオレンジを食べる人で、
実験値の一番低い0.012%になるためには、52個食べる計算になります。
イマザリルのかんきつ類での残留基準は5ppmなので、
一番高い2.3ppmのオレンジでも基準値以下です。
ADI(ヒトが毎日一生涯食べてもいい量)は、0.025㎎/体重1㎏/1日です。
体重50㎏のヒトなら、0.025mg×50=1.25mg=0.00125g です。
かんきつ1個250g×2.3÷100万=0.000575g
0.00125÷0.000575=約2.2個
2.2個で達成してしまうのでギョッとするかもしれませんが、
これは皮を含めた個数です。
果肉だけなら、残留値は最大でも0.15ppmなので、
ADIに達するには33個分くらになります。
果肉だけなら、毎日一生30個くらい食べてもいい計算となります。
●フルジオキソニル
マウスに対してフルジオキソニルを0.3%含むえさを18か月間
食べさせた実験では、痙攣が高い頻度で発生し、
リンパ腫の発生率が増加した。
チリ産レモン7サンプルすべてから
0.01~0.96ppm検出
果肉1サンプルから痕跡 0.01ppm以下検出
アメリカ産レモン5つのうち3サンプルから
0.33~1.6ppm検出
*******************************************************************
ここからは計算です。
えさに含まれる0.3%は、3,000ppmです。
一番高い検出値1.6ppmで割ると1,875倍です。
3,000ppm÷1.6ppm=1,875倍
1日1個皮付きで食べるとしても、
実験値になるには1,875個毎日18か月食べる実験です。
フルジオキソニルのかんきつで類の残留基準は10ppmなので、
基準値以下です。
ADI(ヒトが毎日一生涯食べてもいい量)は、0.33㎎/体重1㎏/1日です。
体重50㎏のヒトなら、0.33 mg×50=16.5mg=0.0165g です。
かんきつ1個250g×1.6÷100万=0.0004g
0.0165g ÷0.0004g=約41個 となります。
皮を含めて毎日41個です。
果肉のみでの残留は0.01ppmとすれば、その160分の1だから、
41×160=6,560個食べる計算になる。
●ピリメタニル
ラットに対して 0.5%含むえさを2年間食べさせたところ、
甲状腺に腫瘍が発生し、発がん性の疑いがある。
ピリメタニル 7サンプル中2サンプルから
0.2ppm、0.4ppm検出
果肉1サンプルから痕跡 0.01ppm以下検出
*****************************************************************
ここからは、計算です。
えさに含まれる0.5%は、5,000ppmです。これを2年間。
一番高い検出値 0.4ppm。
5,000ppm÷0.4ppm=12,500倍 です。
1日1個食べるヒトを基準にすると、
12,500個毎日2年間食べた実験です。????
ピリメタニルのかんきつ類での残留基準は10ppmなので、
基準値以下です。
ADI(ヒトが毎日一生涯食べてもいい量)は、0.17㎎/体重1㎏/1日です。
体重50㎏のヒトなら、0.17 mg×50=8.5mg=0.0085g です。
かんきつ1個250g×0.4÷100万=0.0001g
0.0085g ÷0.0001g=85個 となります。
皮を含めて毎日85個です。
果肉のみでの残留は0.01ppmとすれば、
その40分の1だから、85×40=3,400個食べる計算になる。
●アゾキシストロビン
ラット64匹 0.15%含むえさを2年間食べさせたところ、
13匹死亡し、胆管炎、胆管壁肥厚、
胆管上皮過形成などが認められた。
アメリカ産レモン5サンプル中
3サンプルから 0.02~0.57ppm検出
********************************************************************
ここからは計算です。
えさに含まれる0.15%=1500ppmです。
一番高い検出値 0.57ppm。
1500ppm÷0.57ppm=約2,632倍 となります。
1日1個のオレンジを食べる人で、
実験値の0.15%になるためには、2,632個食べる計算になります。
毎日この数量を2年間毎日オレンジたけ食べたら、
残留農薬の影響の前に、
そりゃー体オカシクなるでしょう。
アゾキシストロビンのかんきつ類での残留基準は10ppmなので
基準値以下です。
ADI(ヒトが毎日一生涯食べてもいい量)は、0.18㎎/体重1㎏/1日です。
体重50㎏のヒトなら、0.18 mg×50=9mg=0.009g です。
かんきつ1個250g×0.57÷100万=0.0001425g
0.009g ÷ 0.0001425g=約63個 となる。
毎日皮付きで63個を食べる計算となる。
ここまでのまとめ
表1、農薬成分名ごとの実験値、ADI、残留基準値、実測検出値(ppm)
* | 実験値 | ADI | ADI (※) | 残留基準値 | 実測検出値 |
成分名 | ppm | mg/体重㎏/日 | ppm | ppm | ppm |
TBZ | 7,000 | 0.1 | 5 | 10 | 3 |
イマザリル | 120 | 0.025 | 1.25 | 5 | 2.3 |
フルジオキソニル | 3,000 | 0.33 | 16.5 | 10 | 0.96 |
ピリメタニル | 5,000 | 0.17 | 8.5 | 10 | 0.4 |
アゾキシストロビン | 1,500 | 0.18 | 9 | 10 | 0.57 |
ここまでの話を一覧でまとめました。
成分名の右隣の列が実験で用いた値(複数ある時は小さいほう)、一番右は実際に検出された値(複数あるときは大きいほう)、右から二番目の列はかんきつにおける残留基準値です。
ADIは、一日摂取許容量で、毎日一生食べても影響ないとされる量で体重あたりのmgで表します。※印はppmに直すため、体重50㎏のヒトが1㎏のかんきつを食べた時の割合(ppm)です。フツー1㎏も食べないと思うけど・・・
実験で用いた値がいかに大きすぎるかが、わかると思います。
要するに、イッキ飲みで急性アル中、死亡したからといって、
お酒は全部危険というわけではありません。
ほどほどに飲めばむしろ楽しいものです。
もちろんお酒はいっさい飲まないという選択肢もあります。
この程度の化学物質は食べても、外国産のかんきつやバナナを時期を選ばず食べれるという豊かな食生活をよし、とするか、
いっさい食べないと決めるかは自由です。
ほかの農産物でも、有機だオーガニックだ、無農薬だと求めても
一般の慣行栽培の農産物でもほとんどが基準値以下なので、
そこまで神経質になる必要はないと、私は考えてます。
今回の実験は、すべてたくさん摂取しすぎ------量を考えよう
日本酒のアルコール度数が15度(15%)とすると、
1%は、1万ppmですから
アルコール分15万ppm の液体を毎日何升も飲んで、
小原庄助さんががんになろうが、肝臓やられようが、
身上(しんしょう)つぶしたからといって、
お酒が悪い、アルコールが悪い、
造り酒屋や販売店が悪いなんて、誰も思わないでしょう。
そんなに飲むほうが悪いと思う方がほとんどではないでしょうか?
今回の実験結果は、すべて、この小原庄助さんのケースのような気がします。
あなたは、どう感じますか?
アルコールの部分を食塩に置き換えてもかまいません。
みそ汁とか、ラーメンの汁とかに、塩分何%か入ってますよね。
1%で1万ppmです。
みそ汁は、1.13% =1万1300ppmです。
https://www.marukome.co.jp/customer/faq/detail/062/
ラーメン
300mLの汁に 10gだと 3.3%=3万3000ppmです。
それでも、みそ汁は毎日、ラーメンは1週間に何回かでしょうが、
どちらもガブ飲みは、しませんよね。
1升とか、は。
このように、小原庄助さんのようなケースだけをとりあげて、
飲んでいる酒が悪い、という結論しているような感じです。
「量」に関する概念がゼロです。
とんでもなく多量の実験結果だけから結論を出してはミスリードとなります。
小原庄助さん、なじみがない方はこちらの歌をお聞きください。
2:20頃から出てきます。
余談
記事本文中に、次のような記述があるが、それぞれ、
現在も「農薬として使われているもの」です。
「フルジオキソニルは農薬として使われていたもの」:セイビアーフロアブル
「アゾキシストロビンも農薬として使われていたもの」:アミスター20フロアブル
ビールやワインから除草剤の成分が出た
●ビールやワインから、除草剤の成分であるグリホサートが
検出されたという記事紹介してくれる人がいました。
で、グリホサート摂取するとがんになるという。
こちらです↓↓↓
http://urx3.nu/YVZZ
一番多いので、50ppb程度。
ppbは、10億分の1という割合で、
ppmは、100万分の1、
%は、100分の1、という具合に割合なので、
量の数字がないとなんともいえません。
アルコール分5%のビール500mLを1本だと
アルコール分は25mL、10本で250mLです。
昔やった食塩水の問題と同じです。
ビール好きの私としては
確かにキニナル記事なので計算してみた。
ビールとワインのアルコール度数をそれぞれ
5%、15%としてppbになおすと、
それぞれ5千万ppb(5%)、1億5千万ppb(15%)となる。
これに対して、グリホサートは50ppbという。
がんになるグリホサートの量がわかりませんが、
グリホサートでがんになるずっと前に
アル中になるか肝臓やられそう。
グリホサートは発がん性ありと
WHOの下部組織である国際がん研究機関(IRAC)が認定しているようですが、
同時にアルコール飲料も発がん性ありと認定しています。
お酒(類)はほどほどに、
というフツーのお話しじゃないのかな?
あなたは、どうお感じになりますか?
表2、ビール・ワインに含まれるアルコールとグリホサート(%とppb)
* | アルコール | アルコール | グリホサート |
品名 | % | ppb | ppb |
ビール | 5 | 50,000,000 | 50 |
ワイン | 15 | 150,000,000 | 50 |
まとめ
ここに掲げた実験は、体に影響が出始める最低線の薬量がわかりませんので、
この実験結果と残留値の比較だけで安全宣言することはできません。
しかし、実験そのものの荒唐無稽さは、よくわかると思います。
別の資料からとったかんきつ類での残留基準やADIの値とを比較しました。
えさに含まれる1,000ppmというレベルは、
2013年アクリフーズ群馬工場での
マラチオン混入ピザやコロッケのレベルであり、
故意にかなり濃い農薬を吹きかけたレベルです。
マラチオン乳剤は50%製剤で、
作物にかけるには1000倍に薄めると、
それだけで、500ppmになります。
食べ物から1,000ppmというレベルが検出される
というのは相当異常な状態です。
実験自体がそういうレベルということです。
ADI比では、6.7個、2.2個、41個、85個、63個と
ばらつきがでましたが、
一番少ないイマザリルの2個でも毎日皮を含めて
食べても大丈夫という計算になります。
果肉のみだとイマザリルでも33個となります。
もちろん、人間の決めていることなので、
いまの基準が絶対であるという保証はどこにもありませんが、
いまのところ、いろんな検査機関の検査結果でも
基準値より相当低い値であることや、多くは皮に残留していること、
輸入かんきつだけが原因となる健康被害は出ていない
ようなので、安全とみなしてよいものと考えます。
この記事から、どう判断するかは個人の自由ですが、
このレベルでも食べないとなると、
時期を選ばず外国産のオレンジ、
本来は夏野菜であるトマト・きゅうり・なす・ピーマン・いちごなども
冬場の温室・ハウス栽培物はダメ、
もともと日本になかったりんごもダメとなって、
ほんと、食べるものがなくなってしまいます。
残留値はppm、実験値のえさの含有率は%で、ADIはmg/体重㎏/日など、
それぞれ単位が異なるのでこういう実験結果から
ゼロでなければ、すぐに危険であると判断するのは、
早計だと思います。
豊かな食生活と残留農薬のリスクとのバランスとなると思います。
ポストハーベスト農薬 ということば
かんきつ類やバナナなどの収穫後に輸送中などに使用する薬剤は、
日本では食品添加物として「防カビ剤」として認められる。
TBZ、イマザリル、ピリメタニルは過去は農薬としての
登録がありましたが、いまは、農薬登録は失効しています。
フルジオキソニルとアゾキシストロビンは
現在も農薬の成分として使われており、かつ、
防カビ剤(食品添加物)として認められています。
フルジオキソニルはセイビアーフロアブル20という商品名で、
20%製剤として農薬として認められており、
100%純品(原体)が農薬となっているわけではありません。
ほかの混合製剤もあるかもしません。
同様に、アゾキシストロビンも
アミスター20とかアミスター10とかの 商品名で
製剤として20%が主に野菜用、10%は主に果樹用として
メーカーは売り分けています。
100%純品(原体)が農薬となっているわけではありません。
ほかの混合製剤もあるかもしません。
フルジオキソニルとアゾキシストロビンについて、
メーカーに確認したところ、日本では農薬として販売しているだけで、
食品添加物としての認可は、海外での収穫後使用で検出された場合に
食品添加物として認める、という意味です。
同じ成分のものが食品添加物用の製剤として、
販売されているわけではありません。
では、農薬と食品添加物との違いは何かというと、
農薬は生育中の作物にかけて病害虫雑草を防ぐもので、
収穫後(ポストハーベスト)の作物への使用は
同じ成分といえどもできません。
輸入かんきつ類やバナナなどは輸送中など収穫後に使用する薬剤が
必要なので食品添加物としての使用を認めています。
別の言葉では、海外では収穫後にかけるので
ポストハーベスト農薬ともいうようです。
日本では農薬はあくまで生きている作物にかけることが前提です。
もし仮に、薬漬けの果物は、いやだ、ということで、
これら防カビ剤を使わなければ、
カビだらけの果物を食べるか、
輸送中にダメになって残って値段が高くなった果物を
食べることになるでしょう。
そもそも輸入かんきつも、輸入バナナも食べませんということであれば、
必要ない防カビ剤ですが、
外食産業などで毎日のように提供されるこれらの食品流通には
果物も防カビ剤もかかせないものとなっているのでしょう。
自分で食べない食べないといって、江戸時代くらいの
暮らし向きを希望するのであれば必要ない
果物であり防カビ剤ですね。
参考情報
残留農薬基準値検索システム
http://db.ffcr.or.jp/front/
かんきつ類の防カビ剤と残留農薬http://www.syouhisya.or.jp/test/kitanokurashi488kankituruiboukabizai.pdf
TBZ、イマザリル、フルジオキソニル、アゾキシストロビンとも基準値以下だった。
イマザリルなど検出、基準値以内 輸入果物の残留農薬テスト 札幌市http://www.do-syouhi-c.jp/test/kira-82nouyaku.pdf
イマザリルとTBZは防カビ剤として認められており、いずれも基準値以下だった。
防カビ剤最近の事情 東京顕微鏡院
https://www.kenko-kenbi.or.jp/science-center/foods/topics-foods/17003.html