志賀高原のヒョウモンチョウ類の研究
2018/08/02
目次
はじめに
夏の志賀高原をトレッキングしていると
さまざまなチョウに出会います。
志賀高原のトレッキングコースといっても
さまざまな環境があります。
暗い樹林帯のなか、スキー場の草原、
高い山の山頂や稜線など
おなじ志賀高原のなかでもそういった環境の
違いによって、見られるチョウの種類が変わってきます。
なかでも、スキー場のような草原状の場所には
アザミなどの花にくる黄色地に黒のだんだら模様の
いわゆるヒョウ柄のまさに豹紋蝶(ヒョウモンチョウ)類を
よく見かけます。
ところが、ヒョウモンチョウ類にはいくつもの種類があって、
なかなか、個々の種名まではわかりにくい、
というのが第一印象です。
でも、よくよく見ると、ちょっと小柄のもの、
黄色が濃いもの、翅のウラが明らかに違うものなど
何匹も見ているうちにだんだん
違う!ということだけは、
わかってきました。
できるだけ、裏表がわかるように写真を撮って、
あとで図鑑で調べてみると、
A and B and C、A not B and C、A notB notC
のような感じで、
特徴をチェックしていくと、
名前がわかってきました。
手元の図鑑によると日本にいるヒョウモンチョウ類は
18種類で、そのうち北海道だけ、南西諸島だけのものを
除いていくと、
志賀高原にいそうなヒョウモンチョウ類は
以下の1~11番までの11種程度です。
これなら、なんとかなりそうな気がしてきました。
そのうち、6種がすでに撮影済みです。
1、ヒョウモンチョウ
:全国的に減少傾向にある。撮影済。
2、コヒョウモン
:ヒョウモンチョウよりは普通。撮影済。
3、クモガタヒョウモン
:減少傾向にある。湯田中温泉で撮影済み。2018.6.4
4、ミドリヒョウモン
:山地の林道で多数。撮影済み。2018.7.31 焼額山。
5、メスグロヒョウモン
:丘陵地の雑木林で普通。
6、ウラギンスジヒョウモン
:全国的に減少著しい。
7、オオウラギンスジヒョウモン
:増加している地域もある。撮影済。
8、ギンボシヒョウモン
:中部地方の山地部では個体数多い。撮影済。
9、ウラギンヒョウモン
:中山間地では比較的多い。撮影済。
10、ツマグロヒョウモン
:東京付近でも普通、山地にも進出中。
11、コヒョウモンモドキ
:中部地方のみ。現存の生息地は少ない。
12、オオウラギンヒョウモン
:本州では山口県のみ。
13、ヒョウモンモドキ
:本州中部絶滅、広島県のみ。
14、ウスイロヒョウモンモドキ
:中国地方山間部のみ。
15、ホソバヒョウモン
:北海道のみ。
16、カラフトヒョウモン
:北海道のみ。
17、アサヒヒョウモン
:北海道大雪山のみ。
18、ウラベニヒョウモン
:沖縄で迷チョウ。
カタカナの名前だけ見ていると
とくに、ウラギンヒョウモン、オオウラギンヒョウモン、
ウラギンスジヒョウモン、オオウラギンスジヒョウモンあたり、
は、ほとんどお経のような感じで
非常にわかりにくく感じています。
このうち、いくつかを特徴がわかる状態で撮影できましたので、
以下に紹介していきます。
どうぞ、志賀高原のチョウをお楽しみください。
ヒョウモンチョウ
ヒョウモンチョウとコヒョウモンは、ギンボシやウラギンなどに比べ、
やや小型で、表面の黄色はオレンジ色が濃いように感じる。
ヒョウモンチョウの表側、赤い線で囲った部分が
黒い模様が分かれて見える。
似ているコヒョウモンはつながって見える。
![ヒョウモンチョウ 西館山 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ヒョウモンチョウ 西館山 2018.7.17
この写真では、左右の翅の、赤い線で囲った部分が、
黒い点が2つあることが、わかる。
しかも、全体的に黒い色が多いのでメスとみられます。
![ヒョウモンチョウ メス 西館山 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ヒョウモンチョウ メス
西館山 2018.7.17
同じ個体を裏から写す。
![ヒョウモンチョウ メス 西館山 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ヒョウモンチョウ メス
西館山 2018.7.17
以下は、焼額山麓で7月12日に撮ったものです。
![ヒョウモンチョウ 焼額山麓 2018.7.12](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ヒョウモンチョウ 焼額山麓 2018.7.12
同じ個体を撮影したのに、
赤い線で囲った部分がつながって見えたりします。
![ヒョウモンチョウ 焼額山麓 2018.7.12](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ヒョウモンチョウ 焼額山麓 2018.7.12
こちらは、はっきりと分離しているので、
ヒョウモンチョウと判断しました。
![ヒョウモンチョウ 焼額山麓 2018.7.12](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ヒョウモンチョウ 焼額山麓 2018.7.12
コヒョウモン
コヒョウモンは、赤い線で囲った部分が黒丸ふたつつながったように見える。 ↓↓↓
![コヒョウモン 東館山 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
コヒョウモン 東館山 2018.7.17
裏はこんな感じです。
![コヒョウモン](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
コヒョウモン 東館山 2018.7.17
![コヒョウモン 東館山 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
コヒョウモン 東館山 2018.7.17
ここから下は、焼額山麓で7月12日に撮影したものです。
赤い線で囲った部分が、二つの点がくっついたようになっています。
コヒョウモンの特徴がよくわかります。
![コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12
![コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12
![コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12
![コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12
![コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12
![コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12
![コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
コヒョウモン 焼額山麓 2018.7.12
クモガタヒョウモン
この写真は、志賀高原の麓、湯田中温泉、
標高666mでの撮影です。
後ろ翅の裏はのっぺりしており、
一部(赤丸内)に白い紋があります。
![クモガタヒョウモン オス 湯田中温泉 2018.6.4](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
クモガタヒョウモン オス
湯田中温泉 2018.6.4
前翅の表には、オスの性標である黒い線が一本、
よくわかります。
以上のことから、クモガタヒョウモンのオスと判明します。
![クモガタヒョウモン オス 湯田中温泉 2018.6.4](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
クモガタヒョウモン オス
湯田中温泉 2018.6.4
ミドリヒョウモン
後ろ翅の裏には、白い線が3本見えるのが特徴です。
この日は、かなりの個体数みられました。
メスは、もう少し暗い濃い色なので、これはオスと判断できます。
![ミドリヒョウモン 焼額山 2018.7.31](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ミドリヒョウモン 焼額山 2018.7.31
前翅の表側に4本の黒い線の性標がくっきりと
見えます。オスです。
![ミドリヒョウモン オス 焼額山 2018.7.31](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ミドリヒョウモン オス 焼額山 2018.7.31
この個体も、4本の黒線がよくわかります。
ミドリヒョウモンのオスです。
![ミドリヒョウモン オス 焼額山 2018.7.31](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ミドリヒョウモン オス 焼額山 2018.7.31
7月12日にも、同じコースを歩いていますが、
ミドリヒョウモンは全く見られませんでした。
7月31日は、オスばかりだったので、
メスは、これから出てくる可能性が高いです。
ギンボシヒョウモン
赤い線で囲った部分が、逆U字型で、m字型ではない。
逆U字型は、ギンボシか、ウラギンである。
ウラギン オスであれば、青い線で囲った部分にオスの性標である黒線が2本出る。
ウラギンのメスなら、2本線はないが、全体がもっと黒みがちとなる。
よって、ギンボシのメスと
判断しました。
裏が撮れていれば、後ろ翅の裏に白い紋が4つあるはず。
![ギンボシヒョウモン 東館山 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ギンボシヒョウモン 東館山 2018.7.17
こちらは、青い線で囲った部分にオスの性標である2本の黒線が
くっきりと出ています。
赤い線で囲った部分は、逆U字型です。
ウラギンのオスです。
![ウラギンヒョウモン オス ジャイアントスキー場 2018.7.9](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ウラギンヒョウモン オス
ジャイアントスキー場
2018.7.9
後ろ翅の裏に4つの白い紋が見えました。
5つあるのは、ウラギンヒョウモンですが、
4つあるのは、ギンボシヒョウモンだけです。
![ギンボシヒョウモン 焼額山 2018.7.31](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ギンボシヒョウモン 焼額山 2018.7.31
赤い線で囲った部分が、逆U字型なのは、ギンボシか、ウラギンです。
が、青い線で囲った部分に2本の線があればウラギンですが、
ないので、ギンボシヒョウモンのオスとわかります。
![ギンボシヒョウモン オス焼額山 2018.7.31](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ギンボシヒョウモン オス 焼額山 2018.7.31
ウラギンヒョウモン
赤い線で囲った部分で、
後ろ翅の裏の白い模様が5つあるのは、
ウラギンヒョウモンか、オオウラギンヒョウモンのどちらか。
オオウラギンヒョウモンは、本州では山口県のみなので、ウラギンと決定できる。
![ウラギンヒョウモン ブナ平 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ウラギンヒョウモン ブナ平 2018.7.17
白い紋が、5つ。
![ウラギンヒョウモン ブナ平 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ウラギンヒョウモン ブナ平 2018.7.17
これも、白い紋が5つ。
![ウラギンヒョウモン ブナ平 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ウラギンヒョウモン ブナ平 2018.7.17
同じ個体の表側の赤い線で囲った部分が逆U字型は、ウラギンヒョウモンの決め手となる。
オオウラギンヒョウモンは、裏の白い紋が5つだが、赤い線で囲った部分がm字型となる。
オオウラギンヒョウモンは、本州では山口県のみなので、m字型はないとみていい。
![ウラギンヒョウモン ブナ平 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ウラギンヒョウモン ブナ平 2018.7.17
赤い線で囲った部分が、逆U字型で、
青い線で囲った部分に2本の線がない、かつ、
裏の白い紋が5つなので、ウラギンヒョウモンのメスと
わかる。
![ウラギンヒョウモン ブナ平 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ウラギンヒョウモン メス ブナ平 2018.7.17
同じ個体です。
![ウラギンヒョウモン ブナ平 2018.7.17](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ウラギンヒョウモン メス ブナ平 2018.7.17
赤い線で囲った部分が逆U字型で、
青い線で囲った部分に2本の黒線くっきり、
なのでウラギンのオス、とわかります。
![ウラギンヒョウモン オス ジャイアントスキー場 2018.7.9](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ウラギンヒョウモン オス
ジャイアントスキー場
2018.7.9
後ろ翅の裏に、白い紋が5つ、あるのは、ウラギンのみ。
![ウラギンヒョウモン 焼額山 2018.7.31](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ウラギンヒョウモン 焼額山 2018.7.31
赤い線で囲った部分が、逆U字型で、
青い線で囲った部分に2本の黒い性標が見えるので、
オスのウラギンとわかる。
![ウラギンヒョウモン 焼額山 2018.7.31](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ウラギンヒョウモン 焼額山 2018.7.31
この写真も、同様です。
![ウラギンヒョウモン 焼額山 2018.7.31](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
ウラギンヒョウモン 焼額山 2018.7.31
オオウラギンスジヒョウモン
赤い線で囲った部分の模様がウラギンヒョウモンの逆U型とは明らかに異なる。
青い線で囲った部分に黒い線が3本見え、オスとわかる。
![オオウラギンスジヒョウモン 2018.7.17 志賀山温泉](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
オオウラギンスジヒョウモン 2018.7.17 志賀山温泉
後翅の裏側を見ると白い線が見える。
ウラギンのような白い5つの紋はない。
白い線は、ウラギンスジヒョウモンもあるが、
ウラギンスジであれば上の写真の黒い線が2本になる。
よって、これは、オオウラギンスジヒョウモンのオスとわかる。はぁ~・・・
![オオウラギンスジヒョウモン 2018.7.17 志賀山温泉](https://excell.click/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
オオウラギンスジヒョウモン 2018.7.17 志賀山温泉
参考にしている図鑑は、こちらです。
フィールドガイド 日本のチョウ
日本チョウ類保全協会編
誠文堂新光社
・日本でみられる263種全部載ってる。
・オスメス、表裏、季節型なども掲載。
・すべての写真が展翅標本ではなく、生きた生態写真である。
・似た種類は同じページにあり、識別点は、写真に矢印で説明してある。
2012年発行で、現在、一番詳しい本だと思います。