生き物写真館

長野県山ノ内町、志賀高原、栃木県小山市、海外などで 出会った生き物を中心とした写真館です。 野鳥、昆虫、花、などの写真を撮影情報とともにお伝えします。 撮影テクニックやカメラについても書いてます。

農業f よもやま話

【TBS報道特集】「ネオニコ系農薬 人への影響は」を見て その10 動物実験 

2023/06/06

スポンサーリンク
山ノ内町の田んぼ
山ノ内町の田んぼ

●神戸大学大学院 星信彦教授の動物実験 

8:30

無毒性量のネオニコを投与したマウスを
使った実験で異常行動が起きている。

農薬工業会の反論は、
過去・現在の試験方法で問題ないから、
問題ないとの見解である。
 
これに対し、
星教授はさらに反論して、
危険性を訴える。
 
過去・現在の試験方法からの結果だけで、
よしとせず、新しい知見が得られたことから、
新しい試験方法や新しい基準が必要である。
 
両方の言い分を読むと、
星教授の言い分のほうが説得力がある、
と思います。
 

火事や建物倒壊が現実に起きているのに、
古いままの消防法や建築基準法でいいのだと、
農薬工業会は言い張っているかのように見えます。

山ノ内町のたんぼ
山ノ内町のたんぼ

◆私の見解

ただ、番組内では、
7種あるネオニコ全体のように
報じていますが、
実験ではクロチアニジンだけのようなので、
安易な拡大解釈はすべきでないと、
私は思います。

学者は規制を強くせよとの言い分が番組内でも多いが
私は違います。
 
JA佐渡の例のようにネオニコ使わずに稲作農業が
成り立つのであれば、
ネオニコ自体が売れなくなるわけだから、
売れないものに社会的コストをかけて規制する必要もない、
と考えます。

売れない農薬の規制のためにコストをかければ、
次の新農薬の値段があがり、
農家を苦しめるか、
コメの値段を高くする結果につながると、
考えるからです。

ウンカの写真がないので、
仲間のアワフキムシです ↓↓↓

アワフキムシ
アワフキムシ

2023年6月追記 無毒性量について

お恥ずかしいことに、「無毒性量」について、
最近、以下の認識を得ましたので、追記いたします。

無作用量>>ADI>>それぞれの残留基準値>>実際の検出量

星教授の実験は、
「無毒性量」のネオニコチノイドをマウスに与えて、
異常行動を観察している。

だから、私自身、星教授の、
無毒性量自体に疑問を呈するという
主張はそれなりに説得力あると思ってました。

厳しいほうに設定しなおすのは、
悪いことではない、と。
 
ところが、上のような関係が最近わかり、
元の番組では無毒性量というだけで、
実際の投下量がわからないままであるが、
農薬工業会の反論には
50mg/体重kgと書いてあるので、
それをもとに計算してみた。

結論からいうと、
学生が新歓コンパで、
ビール一気飲みで、
急性アルコール中毒で死んだから、
ビールの販売を規制しろ、
というのと同じような話だと、
わかった。
 
つまり、通常ありえないような、
量を一気に与えて
異常があるから規制しろ、です。

無毒性量は50mg/kgとなっていますので、
体重50キロの人なら、2.5g。
2.5gは、実際の重さとして実体ある数値。

以下は、ppmなので、%と同じ割合の数値、
必ず、
分母と分子があって、実体ある数値となる。
ppmは100万に対し1で、1ppm。
 
東京都の実際の抜き打ち検査では、
ぶどうではクロチアニジンの基準値5ppmに対して
実際の検出値は0.02ppm、
基準値比では0.4%です。
 
では、5ppmは、ぶどう100万グラム=1トンに5gの割合。
 
クロチアニジン2.5g食べるには、
50万グラム=500キログラムのぶどうを
食べる必要がある。
 
もちろん、ぶどう以外の果物・野菜にもクロチアニジンが
入っているとしても、
作物によって基準値や実際の検出値が多少異なるとしても、
果物・野菜の合計で500キロ、半分の250キロ、
10分の1の50キロだって、
1日に食べる人はいないでしょう。
 
厚労省のすすめる1日あたり350gの野菜食だって、
達成できてない人がほとんどだと
いう話があります。
 
計算を簡単にするため、果物・野菜500gとしたら、
クロチアニジンは2.5gの1000分の1、0.0025gとなります。


もう一度言います。
クロチアニジン2.5g食べるには
500キロの果物・野菜を食べる必要がある。それも毎日。

つまり、
星教授の実験は、ビール1000杯一気飲みしたら、
異常行動あったんで、規制しろという話です。
 
一杯が、ジョッキでも、コップでも、おちょこでも、
どーでもいいくらい、
1000杯一気に飲むやつはおらんだろというくらい、
ありえない数字です。

ジョッキ1杯500mlなら、1000杯で500リットル、ドラム缶2.5本分。

おちょこ1杯36mlなら、1000杯で36,000ml、36リットル。1升瓶20本分。

500リットルと36リットルとでは、100倍以上の差がありますが、
どちらにしてもありえない数字であることは変わりません。

無毒性量を 100としたら、
1日あたり摂取量ADIは1,
それをもとに、
作物ごとにわりふるため、
ざっと、100種類の作物があるとすれば、
各作物平均では、1が残留基準値となる。
さらに、実際の検出値は、
残留基準値の0.4%なので、0.004となる。

0.004と100との割合は2万5000倍です。
 
ビールでたとえると、
厚労省は中瓶1本500ml、程度を適量と想定してますが、
2万5000本を一気飲みしたら異常行動が出たという
実験です。
これ、実験というの?

こんな実験をテレビで放送する価値があるのか、です。

ヒコーキが落ちる確率 9ppm
クルマの死亡事故 30ppm

だけど、ヒコーキ乗らないとき、クルマ乗らないときはゼロです。

同様に、各作物ごとにppmが決まってますが、
毎日、全作物を平均的に食べるわけではないので、
日によって、ゼロのものもたくさんあります。

たとえば、スイカ、年に何グラム食べますか?
ぶどう、年間に10キロ食べますか?
おコメは毎日食べるとして、基準は概して低めになってます。

コンビニでビールを買うには、
年齢確認ボタンを押しますが、
 
危険だから、必ず精神鑑定書が必要、
住所氏名電話番号とハンコが必要、
1日あたりアルコール量で規制して、
買う量を規制しろ、
こんなことをネオニコチノイド系農薬に対して、
提案しているようなもんです。
 
規制さえすれば、
豊かな社会が実現できるのでしょうか?

●基準値と実際の検出値の比較

東京都(平成2年)の抜き打ち検査では、
ネオニコチノイド系農薬は以下のとおりで、
実際の検出値は
基準値の0.02%~高くて8%です。

日本は基準値が緩すぎるという説もありますが、
常に基準値ギリギリまで残留するわけでないことが、
この表からわかります。

分類農薬名食品名検出数残留基準値ppm検出値ppm基準値に対する検出値の割合
含窒素系アセタミプリドキュウリ120.010.50%
含窒素系アセタミプリドトマト120.031.50%
含窒素系アセタミプリドブドウ150.020.40%
含窒素系アセタミプリドミズナ150.265.20%
含窒素系アセタミプリド西洋ナシ120.021.00%
含窒素系クロチアニジンブドウ150.020.40%
含窒素系クロチアニジン玄米110.022.00%
含窒素系ジノテフランキュウリ120.010.50%
含窒素系ジノテフランキュウリ220.073.50%
含窒素系ジノテフランキョウナ1100.030.30%
含窒素系ジノテフランコマツナ2100.020.20%
含窒素系ジノテフランダイコン10.50.048.00%
含窒素系ジノテフランチンゲンサイ1100.656.50%
含窒素系ジノテフランミズナ1100.121.20%
含窒素系ジノテフラン玄米1220.010.50%
含窒素系ジノテフランブドウ1150.030.20%
含窒素系チアクロプリドリンゴ120.063.00%
含窒素系チアメトキサムキャベツ150.020.40%
含窒素系チアメトキサムブロッコリー150.071.40%
含窒素系チアメトキサム日本ナシ110.044.00%

まとめ

農薬の危険性をあおる情報はいろいろあふれていますが、
その実験データをよく見ると、
通常考えられない量を与えて危険という例も多くあります。

今回は、私自身「無毒性量」という言葉に、
その数値を厳しめに設定しなおすという星教授の提案は、
いいかもと思っていましたが、
こうして数字をあてはめて考えてみると
あまり意味ない実験だと思うに至りました。

ただ、「無毒性量」という数値で影響あるようなので、
この言葉の扱い自体を考え直すのは賛成です。

スポンサードリンク

-農業f, よもやま話
-, , , , ,