生き物写真館

長野県山ノ内町、志賀高原、栃木県小山市、海外などで 出会った生き物を中心とした写真館です。 野鳥、昆虫、花、などの写真を撮影情報とともにお伝えします。 撮影テクニックやカメラについても書いてます。

農業f

フェロモン農薬の思い出

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フェロモン農薬
フェロモン農薬

フェロモン農薬とは

写真の赤いひも、農薬なんですよ。

ストロー状になってて、
害虫である蛾のニオイ、フェロモンが
入ってます。
畑にたくさんあると、ニオイが充満して、
本物のメスが探せなくなって、
交尾が減って次の世代が減る、という仕掛けです。
 
 
私が農薬会社の研究所にいた頃、
1980年代から、商品化されてます。

◆お茶では

静岡県では、当時、
化学農薬の効かないお茶のハマキムシが
増えてきて困ってました。
それで、このフェロモンを茶畑に吊るして
ハマキムシを減らそうと県も一生けんめいで、
私たちも茶畑に行って、虫を取ってきて、
交尾率を調べたり、被害の葉っぱの少なさを調べて
成果をあげました。

化学農薬不要で、健康面、環境面にも
いいことずくめ、抵抗性害虫もこれでオシマイでした。
 
ところが、虫のほうも、対抗してきて、
最初のフェロモンでは効かない虫も出てきたといいます。
 
その後、業界離れてどうなったか知りません。

◆りんごでは

一方、りんごなど落葉果樹では、
シンクイムシが一番の害虫なので、
シンクイムシのフェロモンを発売しました。
 
 
これを吊るすと、化学農薬何回減らせて
値段的に合うよね、とか、
国立、県立の果樹試験場の虫の先生方と
話しながら、すすめましたが、
なかなか普及しません。
 
 
なぜなのか、
虫の先生は虫の事しか考えていない。
私も虫屋、当時は気付かなかったけど、
卒業してから気づいた。

りんご輪紋病 
りんご輪紋病 

りんごの農薬散布は、長野県で15回程度ですが、
そのほとんが病気(カビ)対象の殺菌剤散布なのです。
そのために、マスクしてカッパ着て、
水をためたり、ホースを引っ張ったり、とかの作業をします。

そのついでに、一袋2,000~4,000円程度の殺虫剤を
一緒に溶かして、スピードスプレイヤー(SS)という機械で
散布します。
SSの稼働回数は殺菌剤用に減らすわけにはいきません。

スピードスプレイヤー ↓↓↓

農薬散布のクルマ
農薬散布のクルマ

ところが、このフェロモン剤は、その作業とは完全に別に、
上を見ながらの取り付け作業が必要になります。
当時、10アール150本。
それでいて、効くのはシンクイムシだけです。
 
ほかの害虫、
ハマキムシ、キンモンホソガ、アブラムシ、
カイガラムシ、カメムシ、ハダニ、
などには、依然として殺虫剤散布が必要なのです。

確かに、殺虫剤散布の「主な」ターゲットは
シンクイムシですが、
その他の虫にも効いているのに、

フェロモンがあるからといって殺虫剤を止めれば、
「主でない」害虫がうんと増えてしまいます。
 
いまでこそ、シンクイムシとハマキムシ両方に効くフェロモンも、
販売されてますが、それ以外の害虫は依然として殺虫剤だよりです。

こういう事業は、環境安全の観点から県なども補助金を出して、
推進して、フェロモンが半額のうちは農家も使うが、
補助金の切れる翌年にはパタリと使用をやめてしまうのです。

というわけで、りんごを含む落葉果樹での
フェロモン農薬はなかなか普及が
すすんでいないのが現状です。
 
静岡のお茶とは実態が異なるのです

余計なひとこと

このフェロモンの素を作っているS会社のTさんが、
東大卒で、一緒にあちこち訪問すると、
威張っていて、冷や冷やしたこと今でも
思い出します(余計な一言)。

最後に

このように、蛾のフェロモンを畑に充満させて、
交尾を阻害させて次世代を減らす方法を
交信攪乱法といいます。

蛾のニオイだから、安全性には何も問題ないわけですが、
これも農薬登録が必要であり、
袋には登録番号が書いてあります。

これも農薬なのです。
こんな農薬も含めて、耕地面積当たりの農薬使用量(重さ)が
多いからといって、
その国の農産物がすべて「農薬まみれ」かのように、
主張する人たちがいますが、
ほとんど意味がありません。

日本で売ってる農薬は商品名で4000種、原体で590種も
あるわけですから、
農薬使用量が多いからある病気が増えてるとかいう人も、
どの農薬が、と決めて疫学調査でもしないと
ホントのところはわかりません。

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